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スーパーで見かけるサメの切り身や、ふかひれのスープ。その材料として名前が出てくることが多いサメの一つが、ヨシキリザメです。
この記事では、水産庁と国立研究開発法人水産研究・教育機構がまとめている「令和7年度 国際漁業資源の現況 34 ヨシキリザメ 太平洋」(本文と要約版)だけをもとに、ヨシキリザメの体や暮らし、利用のされ方、資源の管理をまとめました。親子でサメ図鑑を読むときの、ちょっとした予備知識にもなります。
ヨシキリザメはどんなサメ?
外洋にたくさんいるサメ
資料によると、ヨシキリザメ(英名:Blue shark、学名:Prionace glauca)は、全大洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布し、外洋性サメ類の中で最も資源豊度が高いと考えられています。
要約版の「生物学的特性」
要約版には、ヨシキリザメの体や暮らしの数字がまとめられています。
| 項目 | 要約版の記載 |
|---|---|
| 最大体長(理論上)・体重(推定値) | 雄284.9cm・199.3kg、雌257.2cm・164.3kg(体長は尾鰭前長) |
| 寿命 | 20歳以上 |
| 50%性成熟年齢 | 雄5.9歳、雌5.3歳 |
| 繁殖期・繁殖場 | 春季から夏季(4〜7月)、北緯30〜40度の海域において出産 |
| 索餌期・索餌場 | 熱帯・温帯域の分布域を回遊しながら周年索餌 |
| 食性 | 魚類、頭足類 |
| 捕食者 | 幼魚は大型サメ類や海産哺乳類 |
「尾鰭前長」は、資料で使われている体長の測り方の一つです。尾びれの部分を含まない長さなので、図鑑に載っている「全長」とは数字が違うことがあります。
ヨシキリザメの5つの生態
ここからは、資料の「生物学的特性」の内容を5つに分けて見ていきます。
1. 分布
資料では、ヨシキリザメは太平洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布し、特に温帯域での分布豊度が高い、とされています。繁殖周期が大洋の南北で逆になるため、北太平洋と南太平洋で異なる2つの系群があると考えるのが妥当で、それぞれの系群に対して資源評価と管理を行っている、と書かれています。ただし、これらの系群を明確に分ける遺伝的な証拠は得られていない、とも書かれています。
2. 繁殖
ヨシキリザメは胎盤型胎生種で、お母さんのお腹の中で育った赤ちゃんが生まれてきます。資料では、産仔数の平均は35.5尾、その範囲は15〜112尾、出生時の体長(尾鰭前長)は34〜36cmとされています。
約11か月間の妊娠期間を経て、春季から夏季(4〜7月)に出産し、出産後すぐに排卵が起こることから連続して繁殖が可能で、繁殖周期は1年と考えられている、と書かれています。
| 項目 | 資料の記載 |
|---|---|
| 産み方 | 胎盤型胎生 |
| 産仔数 | 平均35.5尾(15〜112尾) |
| 生まれたときの体長 | 34〜36cm(尾鰭前長) |
| 妊娠期間 | 約11か月 |
| 出産の時期 | 春季から夏季(4〜7月) |
| 繁殖周期 | 1年と考えられている |
資料では、雌の血中の性ステロイドホルモン濃度を分析した結果、特定のホルモン(プロゲステロン・17βエストラジオール)が妊娠や排卵に関連している可能性が示唆された、とも紹介されています。ただし、上の繁殖周期を裏付けるまでには至っていない、と書かれています。
増える力
資料では、ヨシキリザメの資源の生産力は、他の外洋性サメ類と比べて高い、とされています。性と年齢の違いを考えたモデルから計算された内的自然増加率の中央値は0.384で、この数値は、漁業の影響がない場合、資源量が年間約1.5倍に増加し得ることを意味する、と説明されています。
また、外洋性サメ類は胎生なので、一般的に親の量に比例して子の量が決まる強い親子関係が認められるが、ヨシキリザメについては強い親子関係は認められていない、とも書かれています。
3. 成長と成熟
資料によると、年齢は脊椎骨の椎体にできる輪紋から推定されています。北太平洋の研究では、雄が雌よりも大型化し、成長の差は成熟後の約7歳から生じること、50%成熟年齢は雄で5.9歳、雌で5.3歳であることが報告された、とされています。50%成熟体長(尾鰭前長)は、雄で160.9cm、雌で156.6cmと推定されています。
資料の表2には、北太平洋のヨシキリザメの年齢ごとの推定体長(尾鰭前長)が載っています。
| 年齢 | 雄 | 雌 |
|---|---|---|
| 0歳 | 41.6cm | 34.0cm |
| 1歳 | 68.5cm | 64.3cm |
| 3歳 | 113.6cm | 113.1cm |
| 5歳 | 149.4cm | 149.6cm |
| 7歳 | 177.6cm | 176.9cm |
| 10歳 | 209.4cm | 205.4cm |
表を見ると、0歳から1歳の間に雄は26.9cm、雌は30.3cm大きくなっています。5歳まではほとんど差がありませんが、10歳では雄が4cm大きくなっています。
4. 食べ物と捕食者
資料では、主としてカタクチイワシやハダカイワシ類、マグロ類を含む小型から大型の硬骨魚類、頭足類(イカやタコの仲間)を食べる、とされています。海域や成長段階によって違う餌を食べていて、特に選択的ではなく、生息域に豊富にいる利用しやすい動物を食べる日和見的捕食者とみなされている、と書かれています。
成魚を食べる捕食者は知られていませんが、幼魚は大型サメ類や海産哺乳類に食べられている可能性がある、とされています。
5. 回遊
北西太平洋では、記録型電子標識を使った調査が行われています。資料によると、幼魚は主に黒潮・親潮移行域(北緯30〜45度)に分布し、雌雄とも成長に伴って生息地を南へ広げます。成魚の雌は繁殖のために温帯域と亜熱帯域を季節的に南北に回遊するのに対し、成魚の雄は主に温帯域(北緯30〜40度)に分布して季節的に東西方向の回遊を行う、とされています。
それ以前に、漁業データをもとに提唱された回遊モデルでは、ヨシキリザメは北緯20〜30度の海域で初夏に交尾し、雌は約1年の妊娠期間を経て北緯30〜40度の海域で出産し、幼魚は北緯40度付近の亜寒帯境界付近を生育場として、成熟すると温帯域〜亜熱帯域に移動する、とされていました。
さらに、交尾期間中(春季から夏季)に、北緯30度より北の海域で、雄による真新しい噛み跡(交尾痕)がついた成魚の雌が多数確認されました。このことから、交尾の場所は従来考えられていた範囲(北緯20〜30度)よりも広く、北緯20〜40度まで広い範囲に及ぶことが示唆された、と書かれています。
記録型電子標識のデータから予測された平均移動速度は、0.33〜5.02km/hだった、とも書かれています。
ヨシキリザメの利用と漁業
どんなものに使われる?
要約版の「利用・用途」には、肉はすり身など、鰭はふかひれ、皮は工芸品や医薬・食品原料、脊椎骨は医薬・食品原料に利用されている、と書かれています。
| 部位 | 主な用途 |
|---|---|
| 肉 | すり身など |
| 鰭 | ふかひれ |
| 皮 | 工芸品や医薬・食品原料 |
| 脊椎骨 | 医薬・食品原料 |
気仙沼港と漁業
資料によると、ヨシキリザメはまぐろはえ縄漁業で数多く漁獲されていますが、日本周辺の漁場を除き、基本的には混獲種です。日本の漁船の水揚げは、加工設備が整っている宮城県気仙沼港を中心に行われている、とされています。
2011年の東日本大震災では、港・加工場ともに壊滅的な被害を受け、漁港機能が一時的に停止しました。震災後、気仙沼魚市場の復旧や水産加工施設などの整備が行われている、と書かれています。
水揚量の移り変わり
資料では、ヨシキリザメの水揚量は、1992〜2024年でおよそ5,100〜16,100(平均9,940)トンで、2001年をピークに減少傾向で、2011年は過去最低を大きく更新したが、2012年は2010年レベルまで回復し、その後は5,000〜7,000トン前後で安定している、とされています。
漁法の割合
資料では、漁法別に見ると、はえ縄の割合が1999年のピーク時(96.1%)と比べると近年は減少していて、2024年の割合は86%だった、とされています。その主な原因は、流し網漁業の割合が増えた(1999年の約3%から2020年の約17%まで増加した)ためだ、と書かれています。
ヨシキリザメの資源と管理
資源の状態
要約版によると、北太平洋系群は2022年に資源評価が行われ、MSY(最大持続生産量)を管理基準値とすると、現在の資源状態は、乱獲状態でもなく過剰漁獲も行われていない確率は61.9%であることが示された、とされています。南西太平洋については、乱獲状態になく、過剰漁獲も行われていない可能性が高いことが示された、と書かれています。
管理のルール
要約版では、全てのマグロ類地域漁業管理機関において、漁獲されたサメ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げまたは転載まで船上で保持すること)と漁獲データの提出が義務付けられている、とされています。
また、北太平洋系群のヨシキリザメを漁獲対象としている気仙沼の近海はえ縄漁業では、年間のヨシキリザメの水揚量の上限を6,000トンにすることなどを定めた管理計画が、2016年1月1日から実施されている、と書かれています。
ひれの扱い
要約版によると、2019年のWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の年次会合では、切り離したひれと胴体を一緒に管理するための代替措置を使うことも可能とすることに合意しました。その後、2024年の年次会合で、代替措置の一部を廃止したり、保管場所を同じ魚艙にしたりすることに合意した、とされています。サメ類の完全利用のルールとあわせて、ひれと胴体の扱いが細かく決められています。
ワシントン条約
2022年11月のワシントン条約(CITES)第19回締約国会議で、ヨシキリザメを含むメジロザメ科のサメ類の附属書IIへの掲載が採択されました。附属書掲載は2023年11月25日から発効し、魚体や鰭などを含む一切の派生物を貿易する際は、輸出国による輸出許可書の発給が必要となった、とされています。
ヨシキリザメのよくある質問
赤ちゃんは何匹生まれる?
資料では、産仔数の平均は35.5尾、その範囲は15〜112尾とされています。
どのくらい長生きする?
要約版では、寿命は20歳以上とされています。
何を食べている?
水産庁と水産研究・教育機構の資料では、カタクチイワシやハダカイワシ類、マグロ類を含む硬骨魚類や頭足類を食べる、とされています。
ヨシキリザメの暮らしを親子で知ろう
ヨシキリザメは、外洋性サメ類の中で最も資源豊度が高いと考えられているサメです。胎盤型胎生で平均35.5尾の赤ちゃんを産み、北太平洋を広く回遊します。気仙沼港を中心に水揚げされ、肉や鰭、皮などが利用されています。図鑑や水族館でサメを見るときや、スーパーでサメの切り身を見かけたときに、どんな海で暮らしているサメなのかを親子で話してみてください。